かつての患者さんで今年83歳の女性と2年ぶりにお会いしました。
「先生、私ねガンでよかった。」
は?この人は一体何を言ってるんだ?認知症になっちゃった?
「だって、結核だったら他の人に伝染っちゃうし、迷惑かけるじゃない。ガンだったら感染らないでしょ。」
話を聞けば、左肺に4cmのガンが見つかり、それこそ即入院してすぐにでも切除してほしいと言ったそうだが、詳しく検査をしてみるとさらに脊椎、肩甲骨に転移していて手術ができない状態だったそうだ。しかし、当の本人は落ち込む様子がない。そんな彼女の口から出たのが冒頭の「ガンでよかった。」である。
抗がん剤治療が功を奏し、通院の頻度が週2回だったものが今では月に1回だという。2年前と比べて3kgばかり体重が増えたそうだ。年齢を重ねれば様々な病気の可能性が高くなる。そんな中で手術不能なガンに罹患して、「ガンでよかった。」という言葉が出ることに尊敬しました。自分がその立場になったときにそう言えるだろうか?